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三浦半島で、自分が何をしたいのか。 地域事業の立ち上げから運営までを学ぶ【地域コーディネーターアカデミー①】

2024-12-12Knot

海・山などの自然やそこから得られる食材、軍港や近代建築といった文化資源など多様な魅力を有する三浦半島。その豊富なリソースを最大限活用するため、地域内外のヒト・モノを繋いで新たな価値を生み出す人材=”地域コーディネーター”を育成するプログラムが進行している。地域から18人が参加した第1回(2024年 8月31日、オンライン)はオリエンテーションを実施。対面で初めての顔合わせとなった第2回(2024年9月7日)は、東京から香川県へ移住し、地域活動に取り組む原田佳南子さん(瀬戸内ワークス(株))によるワークショップと横須賀市内でのフィールドワークを行った。

誰かのためじゃなくて、自分の「やりたい!」を原動力に

原田さんは2018年に東京から香川県三豊市へ移住。楽天トラベルでの勤務経験を生かし、地元の人や若い世代を巻き込みながら地域活性に取り組んできた。
うどん打ちと宿泊のセットプランが好評を博す体験型宿『UDON HOUSE 』の立ち上げから始まり、旅行者や移住者に向けた市民との交流拠点『GATE』、香川県三豊市荘内半島にある絶景の一棟貸し宿『URASHIMA VILLAGE』の運営など、”県内よりは県外、国内よりは国外”をターゲットにしたインバウンド事業を展開。 
来訪者に観光地や名物を消費させるだけでなく、地元ならではのアクティビティや住民・事業者との出会いなどといったリアルな体験を与える取り組みを行ってきた。
そんな原田さんが講演で強調したのは6つのキーセンテンス
  1. 自分たちのまちは自分たちで作る
  2. 取るリスクは明確にする
  3. 「なぜやるか」を10回問いかける
  4. 欲しい未来を共有する
  5. チャレンジする仲間を増やす
  6. 課題解決ではなく欲しい日常を追求する
『誰かのために』ではなく自分たちの『やりたい!』を原動力に、やるからには責任(リスク)の所在を明確にして、覚悟を決めて取り組むこと。その姿が「あの人がやっているなら」と地域で新たな挑戦を生む。
「決して1人ではできない挑戦だからこそ、いろいろな場所でいろいろな人と出会うことで仲間を増やす。楽しみながら続けることがいちばんのモチベーションの維持になります。」と原田さんは話す。
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数々の地域事業を手掛けてきた原田さんにしか語れない、ローカルでアクションを起こす心得を説いたところで基調講演は終了した。 
セミナー受講者は自然・環境・宿泊・まちづくり・メディアなど、違った立場で地域活性化に取り組んでいながら、『三浦半島の未来を明るくしたい』という共通の目標からか誰もが原田さんの話に熱心に耳を傾けた。

地域事業のリーダー像 大切なのは「放牧精神」?

ワークショップの後半は、個々の中で浮かんだアイデアや可能性について、受講生同士で話し合いを行い、新たな気づきを得ることが出来た。
続いて原田さんへの質疑応答。
横須賀市内で環境保護活動に取り組む女性は、地域事業を始めるにあたっての段取りについて質問。「地域内の協力者は?規模は?目標は?」そういった想定について原田さんは「一切考えていなかった」と笑う。敢えて目標を設定せず、事業を進めながら常に必要なことをしていくことで、メンバーの強みを活かした持続的な活動ができるという。
「大切なのは『まちの人たちの日常を良くすること』という軸を忘れないこと。リーダーとしてはおおまかに指針を定め、仲間の個々の動きに期待している」という「羊飼い型」のリーダー論を展開した。
「事業を取り組みむにあたって、世代間で意見の不一致があったら?」―三浦市で子育て支援事業を営む女性は、地域に長く住む層と、地元の若い層・移住者との考え方の違いや衝突のリスクを懸念する。
原田さんは「自分の企画に自信があり、思いがあるなら自分の責任で推し進めてもいいのでは」と助言。とはいえ、一人で戦うのには苦しい部分も多い。モチベーションを保つためにも「同じ意見の仲間を持つこと」の重要性も同時に説いた。

地元の人ほど地元を知らない? 再発見が「好き」を加速させる

講演・ワークショップ終了後は、受講生で横須賀市街を散策。横須賀中央駅程近くの三笠商店街を裏から抜け『大勝利山』に至るルートでは三浦半島ならではの高低差の激しさに息を切らしながらも、頂上で見える市街地を悠然と見下ろした。
江戸時代の大動脈・浦賀道を辿り向かったのは汐入町に居を構えるスペース『問室』。1棟平家建ての古民家をリノベーションして2023年にオープンした空間では、展示された本やアートを通して自らの『問い』に向き合った。
近年では全国的に見られるようになった古民家の活用。「こんな使い方があるんだ」「自分にもできることがあるかも」といった気づきや「狭い道の先にこんな素敵な空間があるなんて」「横須賀に住んでいても知らない道や建物ばかり」と感嘆の声も上がった。 
プログラム終了後は飲み物や食材を持ち寄った交流会を実施。原田さんが講演で話した『欲しい未来を共有する』、『チャレンジする仲間を増やす』を体現する早速の機会となった。 
地域を巻き込んだプロジェクト実施のヒントを座学、フィールドワークから学んだ第2回「地域コーディネーターアカデミー」。自分たちが地域で何ができるのか・何をしたいのか。それぞれが自身に改めて問う機会となった。このメンバーならきっと何かができるかもしれない。その淡い期待を、回を重ねるごとに確信に変えていく。 次回は受講者が三浦半島を活性化させるため、どういった企画を展開していくのか、それぞれのアイデアを持ち寄りブラッシュアップしていくワークショップを実施する。
Staff Credit
Written by Kaito Nakahigashi
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