三浦半島地域の活性化に意欲のある事業者がさまざまなテーマでディスカッションを行う「三浦半島みらいミーティング」が開催されている。
2024年11月下旬に実施された第3回のテーマは「三浦半島の楽しみ方の発見」。 “体験” を贈る “体験ギフト” という概念を日本で初めてサービス化したソウ・エクスペリエンスから代表取締役社長の西村琢さんとプロジェクト責任者の熊澤康宏さんが訪れ、前後編のワークショップが実施された。
2024年11月下旬に実施された第3回のテーマは「三浦半島の楽しみ方の発見」。 “体験” を贈る “体験ギフト” という概念を日本で初めてサービス化したソウ・エクスペリエンスから代表取締役社長の西村琢さんとプロジェクト責任者の熊澤康宏さんが訪れ、前後編のワークショップが実施された。
『モノも "体験" を与えるきっかけ』人生に刺激と発見を与える体験ギフト
興味はあっても、チャレンジする機会がないコトやモノ。そのきっかけを贈ることができるのが、ソウ・エクスペリエンスの体験ギフトだ。やってみることで視野が広がったり、新しい趣味を見つけたり。『一瞬の非日常ではなく、相手の内面に永く残る、消えない贈り物』が、商品のテーマだと西村さんは語る。
パラグライダーや乗馬、スパ、陶芸など、ギフトは “おでかけ” を伴う体験が中心だが、知育玩具やスペシャルティコーヒーまで、それぞれを楽しむことで特別な体験を得られる “モノ” のギフトも充実している。

実際に同社が提供している体験ギフトの一部を紹介。参加者らは後編のワークショップに活かすべく、西村さんの話を食い入るように聞いていた。
後編はこの講義を踏まえ、参加者自身が体験ギフトを考案していく。
体験には「ピーク」を キーワードは「非日常」?

10日後、再び会場に集まった参加者。それぞれが考案してきた体験ギフトの素案を熊澤さんが3つ選び、グループに分かれてブラッシュアップを図った。
発表の前に熊澤さんが強調したのは、体験を作る上で大切にしている3点。
発表の前に熊澤さんが強調したのは、体験を作る上で大切にしている3点。
- 体験した後に自身に残るものを設定する
- 時間の中で一番楽しい『ピーク』を設定する
- 体験に起承転結をつける
その場限りで楽しい体験ではなく、体験した人の人生に何かを残す体験で、なおかつその流れにストーリーがあるものを目指す。
素案から選ばれたのは、下記3体験。
- 逗子の綺麗な海で楽しむSUP体験
- 育児サポートの体験コース
- 『ハレの日』にむけコーディネートをスタイリストに手伝ってもらう体験



前述の要素3つを踏まえ、各体験がよりユーザーに選ばれるためにはどうするべきか。
磨き直したアイデア "提供者にも喜びを"

『逗子の海は秋・冬のオフシーズンこそ海がきれい』という点から着想を得たSUP体験。既に夏のシーズンで稼働しているプログラムでは海上での写真撮影を希望するお客さんが多いことから、ツアーにカメラマンを帯同させて体験後に写真を提供する段取りを考案した。体験の “ピーク” はオフシーズンだからこそ見ることができる景色の撮影だ。
近年古民家を使用した体験ギフトが流行している理由の一つは “非日常” だと話す熊澤さん。『普段は見れない』という希少性が体験の価値を上げる要因となると評価した。『撮影がピークなら』と、体験にさらなる特別感を与えるため『カメラマンは特別に複数人帯同。動画も撮れる』という要素を加えてもいいのでは、というアドバイスも加えた。

育児サポート体験の内容は、利用者が育児と格闘する中で経た試行錯誤を第三者にフィードバックしてもらうもので、4回のカウンセリングで “なぜうまくいかないのか”、 “どうしたらうまくいくのか” といった悩みを相談、解消できるのが体験のピークだ。
孤立・孤独を感じやすい子育てだが、客観的なアドバイスをもらって小さな成功体験を重ねることで日常での発見も増え、自信を持って日々を過ごせるようになることを目指す。
困りごとが解消される1回1回のカウンセリングにピークがあるというこの体験に、『ユニークで面白いのでは』と熊澤さんは頷きつつも、『全体でのピークを最後に設定することで、体験する側も利用しやすくなるのでは』とアドバイスを送った。

ファッションの好みは人それぞれだが、ここぞという日の服装や着こなしは誰かにチェックしてもらいたいもの。そんな “ハレの日” にスタイリストが自分のためだけにヒアリングから服選び、コーディネートまで手助けしてくれる体験もアイデアとして上がった。『いつも同じ量販店の服を…』という人も、これを機会に新しい自分に出会い、自分に自信を持ってもらうのが狙いだ。
『体験をプレゼントした側にも驚きと感動があるといいですね』と熊澤さんがコメント。『お披露目的な時間もあると、それも一つのピークになりうる』

体験者がプロのアドバイスでどう変わったのか。その変わり様と目の輝きは、ギフトの提供者の喜びとなる。『その感動が商品のリピートにもつながるのでは』という発想に参加者は気づきを得たようだった。
子育て関連事業に取り組む女性は、『子育ての楽しさをもっと実感できるような “体験” のギフトを考えてみたい。それとは別に、出産時や特別なタイミングで贈れる “モノ” のギフトも作りたい。行政と連携できるように頑張りたい。』と意気込みを話していた。
教育事業に取り組む参加者からは、『子供の原体験プログラムを立ち上げる予定だが、それをギフトにもしいたと思った。ギフトにするとなると視点が変わるので、また違ったプログラムが生まれるかもしれない。』と胸を高鳴らせていた。
「三浦半島といえば…?」
地元に暮らす住人の多くは食材や文化を思い浮かべることが多いだろう。しかし、 “体験ギフト” は食材、文化、自然といった資源だけでなく、人の想いやアイデア、伝え方次第で利用者に大きなバリューを提供できるビジネスモデル。地域活性で “何か特別なもの” をゼロから生み出していくのではなく、何かを一捻りすることで生まれる価値を事業に変えていくノウハウには参加者も “目からうろこ” だったようだ。
Staff Credit
Written by Kaito Nakahigashi
Written by Kaito Nakahigashi