海・山などの自然や、軍港や近代建築といった文化資源など多様な魅力を有する三浦半島。その豊富な資源を最大限活用するため、地域内外のヒト・モノを繋いで新たな価値を生み出すことを目指す事業者らが集まり、その手法を学ぶ「三浦半島みらいミーティング」が開講されている。
2025年2月上旬に実施された第5・6回のテーマは「地域活性化と民間主体のまちづくり」。香川県三豊市を中心に活躍する地域プロデューサー・古田秘馬さんを招き、講演やワークショップ、フィールドワークを通じて、地域の未来を共に考えた。

古田 秘馬
東京都生まれ。慶應義塾大学中退。
プロジェクトデザイナー。株式会社umari代表
「丸の内朝大学」などの数多くの地域プロデュース・企業ブランディングなどを手がける。農業実験レストラン「六本木農園」や和食を世界に繋げる「Peace Kitchenプロジェクト」、讃岐うどん文化を伝える宿「UDON HOUSE」など都市と地域、日本と海外を繋ぐ仕組みづくりを行う。現在は地域や社会的変革の起業への投資や、レストランバスなどを手掛ける高速バスWILLER株式会社やクラウドファンディングサービスCAMPFIRE、再生エネルギーの自然電力株式会社・顧問、医療法人の理事などを兼任。
2021年には、瀬戸内の香川で、地域の事業者で作る宿・URASHIMA VILLAGEを開業。 地域の共助の社会ストラクチャーデザインを専門とする。2023年香川県にLife Science Studio“The CAPE”をオープンさせて活動の拠点とする。
東京都生まれ。慶應義塾大学中退。
プロジェクトデザイナー。株式会社umari代表
「丸の内朝大学」などの数多くの地域プロデュース・企業ブランディングなどを手がける。農業実験レストラン「六本木農園」や和食を世界に繋げる「Peace Kitchenプロジェクト」、讃岐うどん文化を伝える宿「UDON HOUSE」など都市と地域、日本と海外を繋ぐ仕組みづくりを行う。現在は地域や社会的変革の起業への投資や、レストランバスなどを手掛ける高速バスWILLER株式会社やクラウドファンディングサービスCAMPFIRE、再生エネルギーの自然電力株式会社・顧問、医療法人の理事などを兼任。
2021年には、瀬戸内の香川で、地域の事業者で作る宿・URASHIMA VILLAGEを開業。 地域の共助の社会ストラクチャーデザインを専門とする。2023年香川県にLife Science Studio“The CAPE”をオープンさせて活動の拠点とする。
「有名チェーンが欲しい」のマインドはNG。活力が循環する”自前”でのまちおこし
出勤前の1時間半を自己投資に充てる『丸の内朝大学』をはじめ、当セミナーでも紹介した『UDON HOUSE』、『URASHIMA VILLAGE』など数多くの地域事業をプロデュースしてきた古田さん。

地域での事業運営で大切にしているのは “受け身ではなく、地域自身が町おこしに関わること” だという。
1kmのロングビーチを誇る父母ヶ浜の公共トイレの立て直しに参画する際に、行政から指定管理料を受け取らず、民間投資で事業を行う形を提案。その代わりに現場での裁量権を拡大、バーやテラスなど設置し、美しい景色もInstagramなどで話題になり観光客を100倍に増やした。

地方都市などでは『有名チェーンのカフェやレストラン、アパレルショップが欲しい』と求める声は多く、招致をかける自治体も少なくないが、そうした活性化のあり方に疑問を投げかける。『評価の定まったサービスを求めるのみでは、人口減で市場が縮小した際にすぐに撤退され、まちもすぐに衰退する。地元の人たちが主体性を持って町おこしに関わらなければいけない』。
そうして地元の若者が、観光客と地域をつなぐことを目的とした日本初のコミュニケーションコーヒースタンド『宗一郎コーヒー』 をオープンさせ、大反響となった。
『宗一郎がコーヒー屋を始めて成功した』という事実が『なら俺も寿司屋をやってみたい』という誰かの活力を生み、相乗効果でそのエネルギーが広がっていく。『有名チェーンが欲しい』というマインドではできなかった地域活性だ。
アイデアも敢えて奇抜なものに走るのではなく、 “この街がどうあるべきか” の軸を持つことが大切だと語る。
シンプルでわかりやすく、誰かに教えたくなる、成功するには様々な要素があるが、大切なのは『やらなければいけないから』、『クライアントの意向があるから』という責任逃れのマインドではなく、自身が『やりたい』、『やる必要がある』と思うことができる情熱(Passion)であると語気を強めた。

いくつもの地域事業を手掛けてきた古田さんの話を食い入るように聞いていた参加者。
三浦半島で宿泊や体験事業を展開する男性から『地元の若者のやる気を起こさせるには?』という質問が飛び出すと、古田さんは『本気でとことん話し合う。もちろん厳しく問い詰めることもあるが、逆に下から問い詰められることも。忌憚のない意見を言い合える関係が作れると良い』とアドバイスした。
そのほか、多数の参加者の共通の悩みとして上がったのは資金調達の難しさ。店舗のテナントなどの固定費を消費でなく、投資として活用できるスキームを教授し、その上で一番大切なことは「何をやりたいか明確にすること」だと力を込めた。
「移動する会議室」でバスツアー 地元トークに花咲かせ…

翌日9時、横須賀中央駅に再度集まった参加者たち。「移動する会議室」で三浦半島の各エリアの特徴、違いを体感する2日目のワークショップに取り組んだ。バスに乗って三浦半島の各エリアを巡りながら地域ごとの特徴や違いを体感するフィールドワークで、ファシリテーターとして前日に引き続き古田さんが参加した。

前日からの穏やかな雰囲気をそのままに走り出したバス。横須賀市東部へ進み、走水地区に差し掛かったあたりで古田さんから『皆さんは結局、三浦半島をどうしたいの?』という一言が飛び出した。
“盛り上げたい” という抽象的なイメージではなく、具体的に “移住者を増やしたい” のか “観光客を増やしたい” のか。三浦市在住の参加者は『内輪だけではなく、表立って具体的なビジョンを共有する場面がもっとあっていいと思う』と議論の活発化を促す。改めて初心を思い出すきっかけを古田さんが参加者に与えた形となった。

バスは観音崎を回り浦賀へ。浦賀水道に沿うように久里浜方面を向かい三浦海岸・三崎を目指し南下していく。三浦市に差し掛かったあたりで、地元在住の参加者は三浦海岸の観光活用について『海水浴シーズンに多くの人が集まった時代を知る地元の人も、なんとか盛り上げたいと思っているのだけど…』と呟いた。同海岸は組合の解散で来夏から海の家が廃止され、市が海水浴場を設置する方向で動いていることが報じられている。
古田さんは『まずは小さな成功を積み上げていくことだね』と一言。参加者も『かつてのあり方を追うだけではなく、今の時代に即した事業をできれば』と将来像を描いた。

一行は城ヶ島、三崎を回り横須賀市西部方面へ。話題は地元へのUターンの多い街、少ない街の違いについて。参加者の雑感によると、鎌倉や逗子では進学や就職で地元を出ても、子育てで地元に戻ってくる層が多い一方、三浦・横須賀では市外へ出てそのまま戻らない層も多いという。考察の一つとして、古田さんは『高校生までにどれだけ地元の面白さを伝えられるか。それが将来地元に戻ってくるか否かのポイントになる』と持論を述べた。
その後バスが長井から葉山-逗子方面へ向かうと、逗子在住の参加者から、『今だに逗子を伊豆と間違える人がいる』という発言があり、他の参加者は耳を疑ったが、『東京側にも三浦半島の人たちの拠点を一つ作り、そこで三浦半島のコミュニティを広げていけば、自ずと知名度が上がり興味を持ってくれやすくなるのでは?』という提案が出た。これまで ”セカンドハウスを三浦半島に” と提案してきた人たちにとっては新しい発想を得たようだった。
3時間ほどの行程だったが、通行地域で地元在住者によるトークが展開され、地域ごとの主張や『ここだけでしか話せないぶっちゃけ話』も飛び交うなど、和気あいあいとした雰囲気で会は進行した。

体験を終えた参加者からは『今まで勝手に作り上げていた街づくりに関する常識などをひっくり返され学びの多い時間だった』、『地域ごとの特徴や車窓からの情報に対して、参加者自身が発想するなど、アイデアの共創体験がとても良かった』、『臨場感がありアイディアが飛び交う貴重な機会だった』といった声が聞かれた。
第7回となる次回は、三浦半島を「自然環境」の面から掘り下げるワークショップを実施する。
Staff Credit
Written by Kaito Nakahigashi
Written by Kaito Nakahigashi