横須賀中央駅から程近い雑居ビルに、ジャズのスタンダードナンバーの名を掲げたジャズ喫茶がある。看板に描かれたマイルス・デイヴィスのアルバムジャケットを模したデザインが、なんとなく敷居の高さを感じさせる店『MISTY』だ。昼の12時を回ると、旨いランチとコーヒー、そして至福の一服を求めて今日もサラリーマンたちが集まってくる。
Index
- ビルの地下で、シン・純喫茶文化を継承
- 訪れる人を裏切らないメニューと味
- 純喫茶とは、店主のこだわりが詰まった場所
- 語り継がれるJAZZのように、100年続きますように
ビルの地下で、シン・純喫茶文化を継承

階段を降りてまず現れるのは食品サンプルが並ぶショーケース。流行りの純喫茶を地で行く、懐かしさに包まれた空間が広がる店内。そしてカウンターには、拍子抜けするほど穏やかなマスターの小澤さんが立っていた。ヘッドバンドをつけたいでたちは、ジャズという敷居の高さを感じさせず、どこか親近感を覚える。

生まれも育ちも横須賀だという小澤さんも、実は『MISTY』の常連の一人だった。 オープンは1985年頃、当時は横ビルの映画館の隣にあったそうだ。こよなくジャズを愛した先代のマスターがセレクトした音楽と、旨いコーヒー。居心地の良さに足繁く通っていた小澤さんは、マスターに誘われ、アルバイトとして店と関わるようになった。
「最初はホール担当だったので、コーヒーの淹れ方などは全てマスターの仕草を見て覚えました。背中で語るタイプのマスターだったので、バイト終わりに、当時この辺りにあった『茶豆湯』さんなどのコーヒー専門店に通い、学んだりもしました」
現在の場所に移転後、オープンから10年余りでマスターが急逝。小澤さんはマスターに恩返しするため、『MISTY』を引き継いだ。ジャズ愛好家とも言えない小澤さんが『MISTY』を引き継ごうと思った理由が、この店の一つの魅力である気がしてきた。


元々、紅茶専門店だったこともあり、メニュー表にはコーヒー以外にもさまざまな紅茶が名を連ねる。生姜焼きやナポリタンなどの味付けも、ほぼ当時のままだという。「マスターがつくったものは、全てそのまま残そうと思いました」
場所柄、昼間は市役所職員や神奈川歯科大学の学生が多く、サラリーマンや米軍関係者なども訪れる。それぞれがゆったりとした時間をここで過ごしていく。
「喫茶店の数も減って、若い人にとってコーヒーと言えば駅前にある大手チェーン店のイメージですよね。でも歯科大生は先輩から教えてもらったり、学校のWEBサイトにも掲載されていたりするようで、代々通ってくれています。ありがたいです」





横須賀中央エリアは市街地再生計画により、商店街が少しずつ大型商業施設やホテルへと姿を変えている。そしてこの辺りも10年後には再開発が始まる。
「シャッターが降りている店も多いし、この辺りは再開発向きなのかな。便利になるのは嬉しいけど、横浜などよその街に似てきて、横須賀らしい味わいがなくなるのは寂しいですよね。お客さんからは『ここの店は残してほしい』と言われるので、できる限り頑張りたいと思います」
居心地の良い場所の定義はそれぞれ違うが、ここにくれば、居心地の良さを感じていただけること間違いなし。それは、30年近く引き継がれ、存在していることが物語っている。





Staff Credit
Written by Rieko Aihara
Photographed by Yui Kuwabara
Written by Rieko Aihara
Photographed by Yui Kuwabara
Information
住所:神奈川県横須賀市若松町1-8 泉ビルB1
横須賀中央駅より徒歩2分
駐車場なし(お店の近くにコインパーキングあり)
営業時間:11:00-20:00
定休日:日曜
横須賀中央駅より徒歩2分
駐車場なし(お店の近くにコインパーキングあり)
営業時間:11:00-20:00
定休日:日曜
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