「三浦野菜を生かしたお土産を作りたい」「横須賀でフェスを開きたい」「地域をキッチンカーで盛り上げたい」——。
地域への愛着と志を持つ事業者の挑戦を後押しするため、神奈川県は令和7年度事業として「リソースシェアin三浦半島」を実施した。
本事業は、事業アイデアを持つ地域事業者がプレゼンテーションを行い、それに共感した先輩経営者ら(支援者)が、自身の持つ施設、人材、ノウハウ、資金などのリソースを提供したり、アイデアブレストをすることで挑戦を支え、連携事業の創出と地域経済の活性化を目指す取組みである。
本記事では、対象となる事業者を変えて開催した全3回のイベントの様子を紹介する。
課題可視化編
概ね創業5年以内の経営者・事業者を対象にした第1回は、2025年10月5日に横須賀市生涯学習センターで実施。「課題可視化編」と銘打ったように、経営者が新たな事業に取り組む際に課題となるような事項を、先輩経営者とのブレインストーミングで明らかにしていった。

三浦市でペットと泊まれる民泊『WONDER BASE』を運営する右山真樹子さん(株式会社アイルスケープ代表)は、地域資源を生かした宿づくりを模索していた。宿泊者に三浦ならではの体験を届けるため、地元の飲食店やペット関連事業者との連携によって集客を広げていきたいと考えていたという。
当日は、すでに民泊を運営している事業者などが支援者として参加。単なる宿泊施設としてではなく、「訪れた人にこの地域でどのような時間を過ごしてほしいか」という視点から議論が深まった。その対話の中から、民泊を拠点に三浦の自然やまちを体験するフィールドワークの開催というアイデアが生まれ、具体的な企画づくりが動き始めている。
さらに、支援者として参加していた女性がイベント後に三崎の飲食関連事業者と右山さんを繋げ、ペット向けサービスでの協業を模索。新たな事業展開の可能性について検討が進められている。

同日に参加した神馬彩夏さん(地球もわたしも元気になる合同会社代表)は、ECOをテーマにしたサステナブルマインドを広める『エコルシェフェス』の開催に際し、スポンサー企業へ提示する協賛メニューのアイデアを支援者らと交換。その結果、ありがちな協賛企業のPRや同社のサービス提供だけではなく、企業が求める人材採用と営業の場となるアフターパーティーをセットにする新構想が浮かび上がった。
戦略具体化編
第2回(2025年12月14日)は、鎌倉市にある『面白法人カヤック』で開催。方向性はある程度明確になっているものの、効果的な戦略や具体的な進め方を決めかねている概ね35歳以下の経営者や事業者が集った。

秋谷や佐島など三浦半島屈指の景観を誇る横須賀の西海岸エリア。野口千士朗さん(株式会社ポケットポート サービス統括マリーナエリア推進室室長)
は、西海岸エリアの魅力を再発見し、地域とともに新たな取り組みを作りたいと熱く語る。具体的なプランはまだ何も定まっていないが、同地区にゆかりのある支援者2人がその熱意に惹かれた。3人は後日、地域活性化のための協議会を結成し、町おこし施策の具体化へ向け動き出している。

最福寺のスペース活用について、近隣に詳しい支援者は、同寺が三崎港からほど近い高台にあることに着目。地震・津波時の避難場所や、防災拠点としての整備を提案した。寺発信の災害時の避難経路マップの作成や、その経路を実際に歩く街歩きツアーなど企画が膨らんだ。
リソース連携編
第3回(2026年1月24日)は三浦市・上宮田『cafe134』で行われた。事業を行うにあたっての課題や不足するリソースが明確となっている事業者を対象に、具体的にリソースの共有ができる事業者同士のマッチングを目指した。

三浦市三崎で空き家活用事業や三浦野菜を使った食堂を営む菊地未来さん(合同会社MISAKI STAYLE代表)は、三浦野菜を生かしたお土産づくりを通じた地域の農業振興と観光価値向上を目指す。ただ三浦野菜を材料として使うのではなく、規格外として通常は廃棄されてしまう野菜を使った加工食品に意欲を見せる。
菊地さんの構想としては、廃校となった小学校を加工工場として活用しつつ、子育てや介護、障害などでフルタイムの就労が難しい人でも働きやすい環境を整えることで、地域の雇用創出まで見据えている。
当日は支援者とのマッチングには至らなかったものの、会場で新たなつながりが生まれた。支援者の知人が、横須賀市内で障害者支援の法人を営んでおり、その法人と市内の農園が、菊地さんと近い構想を持っていることが判明。後日、両者のマッチングが予定されているという。
フードトラックの事業者団体(一社)三浦半島フードトラック協会で理事を務める二ノ宮拓真さんは、同協会への加盟店舗を増やすことでフードトラックによる地域活性を目指す。
フードトラックはイベントやテナントビルの敷地内へ出店するケースが多くみられるが、かつてはイベント主催者や各店舗がそれぞれ個別に営業活動を行っており、出店者の募集に手間がかかっていた。店舗募集を一手に請け負う団体を作ることで案件の取りこぼしを防ぐだけでなく、行政やショッピングセンターなどとの関係構築を図る狙いだ。
ここでは、プレゼンターとして参加した、三浦市内でロケーションサービスを運営する事業者が「撮影の際にロケ弁でキッチンカーを呼びたい」と声を掛ける場面も。参加事業者同士の共創が生まれた。
“リソース循環”で三浦半島を誰もが挑戦できるフィールドに
想いを語ることはできてもそれを実際に形にするのは想像以上の困難が伴う。今回のリソースシェアin三浦半島では、互いが影響を及ぼしあう「共創」が起きたことが大きな収穫だろう。それぞれが持つリソースを循環させることで、次なる挑戦への機運が醸成されている。誰にとってもチャレンジができる環境であるため、来年度以降の事業にも注目が集まる。

Staff Credit
Written by Kaito Nakahigashi
Written by Kaito Nakahigashi

