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『木古庭コーヒー』が生まれるまで その①〜歴史と挑戦が交差する場所

2026-01-26Knot

横須賀からほど近い、葉山にある築100年を超える古民家。大きな門をくぐり玄関に入ると、コーヒーの良い香りが鼻腔に届く。『木古庭コーヒー』は2025年にオープンしたカフェ。 横須賀・葉山エリアの新たなコミュニティとして、注目を集め始めている。 カフェのオーナーである澁谷さんに、お話を伺った。

浦賀道の古民家が新たな「憩いの場」に

飲食店を複数経営する起業家であり、地元である横須賀・浦賀道の歴史や文化の保全・振興に長年尽力してきた澁谷さん。
物件と出会ったのは友人から『葉山の古民家で和食店をやりたいという家主がいる』と言われたことがきっかけだった。今、和食の料理人の確保は厳しい状況に置かれている上、物件には駐車スペースが少ない。交通の便を考えると、和食店は厳しかった。澁谷さん自身、事業を若い人たちに引き継いでもらう方向で調整していたので、始めは断ったそうだ。
しかし、再度相談を受け、澁谷さんは物件を直接見に行くことに。
「立地と建物をよくよく見てみると、確かに不便ではあるけど、自然が多くて良い場所。自分なりにその場所を活用できないかという気持ちが生まれたんだよね。住宅地だし、自然を活かして地域の人が繋がれる場所にできないかと思って。」
国道から少し入った、ゆるやかな坂を上がると、立派な門構えが見える。目の前には田んぼが広がり、さらに奥には竹林。木古庭という土地でも珍しい、ポテンシャルのある貴重な場所だと感じた。
「大家さんと相談して、今ここにあるものを活かそうという話になった。ここは、江戸時代中期に浦賀奉行所があった ”西浦賀道” の一角。今の若い子は知らないし、歴史という側面もアピールしたい。利益を追求するだけではなく、新たなコミュニティスペースとしても運営したいと方針を決めて。」
浦賀奉行所と、塩商人によって基盤が作られ、重要な地点として地域を発展させた浦賀道。その歴史について、地元民でも、知る人はかなり減っている。このままでは歴史は埋もれていってしまう。2027年には、浦賀にゆかりのある小栗上野介忠順が主人公の大河ドラマの放送が予定されており、注目が期待されている。
『地域の人が繋がれる、憩いの場』
木古庭コーヒーは、そんなコンセプトからスタートした。

若い人が挑戦できるような場所に

具体的にどうすれば良いのか。自分の他の事業もあって常駐ができない澁谷さんは、どうせなら若い人が挑戦できるような場所にしたいと考えた。
「どこもそうだけど、このあたりも人口が減少している。新興住宅地ではないので住んでいる人も高齢化している。新たに人を呼ぶと同時に、地域住民にも参加してもらえる場所にしたいと思ったんだよ。そして、若い人に携わってもらいたかった。」
木古庭コーヒーの立地は、駅前のように人が自然と集まるようなところではない。一方で飲食する場所があまりないエリアでもある。葉山であり、横須賀にも近い土地の利を活かせないかと考えたそうだ。
「まずは信用できるスタッフを見つけなければと、いろんな人に会ってね。最終的に今バリスタをしてくれる、家入 くんと出会った。とても人柄も良くて、コーヒーの勉強もしている。バリスタとしてぴったりだと思った。彼は今年の3月までという条件で働いてくれているんだけど、引き継いでくれる人も探してくれた。挑戦したい人を応援し、また次に繋がっていくという形で運営していけたら…。」と澁谷さんは言う。

歴史あるまちの一角に誕生した木古庭コーヒー

大家さんこだわりの内装はそのまま活かすことになった。古民家の母屋にはテーブルが5つぐらいしかなかったため、座席を増やしたが、それでも20席程度。ゆったり寛げるよう、ゆとりを持った配置にした。庭や田んぼ眺めながら過ごすことができる。懸念のひとつだった厨房も、納屋を改造して広さを確保したという。
「フードに関しては無理のない範囲で、と考えているんだよね。地元とのコラボメニューなど、オープン当初から色々なアイデアはあってさ。さらに外でバーベキューができるようなスペースも作りたいよね。」
元々あったものを活かしながら、さまざまなニーズに応えられるように手を入れ、半年ほどの準備期間を経てオープンした。
「待っていてもお客さんが来る場所ではない。でも来てみれば、良さがわかってもらえる。そう感じた。」
バリスタの家入さん
家入さんがバリスタとして、丁寧に淹れるコーヒーは、『木古庭コーヒー』の名を支える看板メニューとなった。現在はフードも徐々に増え、近所の人が立ち寄ってくれることも増えている。
「若者の挑戦を応援したいという気持ちはスタートから変わらない。地域の人も、散歩の途中や、ちょっと一息つきたいときに立ち寄れる場所として喜んで来てくれているよ。」
交流の場、挑戦の場でありたいという思いから、横須賀・葉山の地産地消も意識している。スタートの頃から考えていた、地元とのコラボレーションメニューも実現しつつある。
写真提供:木古庭コーヒー
「木古庭コーヒーの近くで野菜や果物を作っている人たち、手作りケーキやクッキーを作っている人たちがいて。地域の人が挑戦できる場所として、売り場を提供していくつもり。」
ワークショップや、イベントをやりたいと手を挙げた人に、スペースを貸すこともしている。出店者を集めて行うマルシェイベントには、織田信長にちなんだ「楽市・楽座」という名前をつけた。
「建物が古民家だし、浦賀道の歴史をもっと知ってもらいたいので。うちの雰囲気には、この呼び名のほうが合っていると思うんだよね。」

誰かを連れてきたくなる場所を目指して

地元の人にも馴染む一方で、新規の顧客やリピーターも増えつつある。
「インスタグラムを見た若い子たちが、木古庭の自然を見て、好きになってくれています。横須賀、葉山、それぞれのイメージとちょっと違う、こんな場所があるんだってびっくりするみたいです」
今後は浦賀道の一角として、連携して地域振興を進めたいとのこと。
「横須賀の人も、浦賀道に関してはあんまり知らないんで。横須賀の上町エリアには蔵を利用したお店もあり、浦賀道に点在する店同士が連携して、話題性を生み出していきたい」
来てもらえば、また来たくなる、誰かを連れて戻ってきてくれる。 木古庭コーヒーは、すでに目指す場所に向かって進み始めている。
Staff Credit
Written by Natsumi Unoi
Photo by Io Takeuchi
Information
住所:三浦郡葉山町木古庭1620
営業時間:金土日 10:00〜17:00
駐車場:6台あり

※営業時間の変更やイベントの情報などInstagramで発信しています。ご確認の上ご来店ください。 
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