ここ数年、ガソリンスタンドに併設されたショップが話題になっている。例えば、コインランドリーやベーカリーショップ、意外なところでストレッチ専門店とのコラボ。そして、横須賀にはガソリンスタンドのイメージを覆す、地球にやさしい量り売り専門店が2022年にオープンした。
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店内に入ると、お客さんがバッグから容器を取り出して、グラノーラを自分で量り、重さをササッとメモしてお会計をしていた。そのスマートな一連の動作に見惚れていると、「これなら必要な量を自由に買えるから便利だし、無駄がないんです」と、話しかけてくれた。このお店の常連さんだそう。
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量り売りの商品棚には、マイ容器がない人に向けて、使わなくなった空き瓶やタッパーも用意されている。これらは「ブーメランタッパー」と呼ばれ、自由に使って良いとのこと。
「家で不要になった容器が出たら、ここに持ってきてもらっているんです」と、鈴木さんは話す。
なるほど。誰かにとって不要なものは、誰かにとっては必要なもの。
「容器がなくても買い物ができる選択肢を残したくて、ブーメランタッパーを置きました。家で不要なものが誰かの役に立つってとても健康的だと思うんです」と、神馬さん。
ちなみに、使用した容器を再度使うことに抵抗がある人には、デポジット瓶も販売している。後日、お店に瓶を持参すれば、代金が戻ってくる仕組みだ。循環する小さな仕組みが成り立っていた。
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ガソリンスタンドの一角というユニークな立地で、なぜエコルシェがオープンしたのだろう? 神馬さんと鈴木さんに開店までの経緯を伺った。
ショップがオープンしたのは2022年。立ち上げたのは、同じ横須賀の助産院で出産したママ友の二人。
出産を終えた神馬さんが、この先の仕事で悩んでいたとき、「KoKeBee」という蜜蝋ラップのブランドに出合ったのが始まりだ。これは蜜蝋を染み込ませた布を、ラップ代わりに使うもの。エコに関する知識は乏しかったものの、見た瞬間に「これは良い!」と感銘を受けたそう。
「周囲に使っている人を見たことがなかったし、環境問題に周囲がちょっとずつ関心を持ち始めた時期だったので、もしかしたら仕事になるかもしれないと思いました」と、神馬さん。
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そこで、ママ友の鈴木彩子さんに話を持ちかけた。同じ助産院のママ同士でランチをした際、無駄なゴミを出さない「ゼロ・ウェイスト」について鈴木さんが熱く語っていたのを覚えていたのだ。
鈴木さんは小学生の頃から環境問題に興味があり、楽しくてエコに繋がる暮らしに憧れていたという。
「節約や我慢でエコを捉えるのではなく、お得で楽ちんという視点で見れば、エコはもっと楽しくて身近になるはず。そんなエコがあるなら、きっと誰もが取り組みたい。自分だけでは限界があっても、みんながやることで一人の負担が減るんじゃないか。もっともっとエコに対して敷居は低くなると思っていました」と鈴木さん。以前、新聞で知ったベルリンの「無包装スーパー」が日本にもできれば、と長らく思い描いていた。
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そうして、神馬さんの提案に賛同した鈴木さん。ゴミの出ないマルシェを目指して、2021年3月に二人の活動がスタートした。
まずは「マゼラン湘南佐島」で月1回の「エコルシェ横須賀」を開催。蜜蝋のエコラップを販売して、鈴木さんが以前から取り組んでいたパーソナルカラー診断を開く。横須賀の野菜も販売した。最初は訪れる人がほとんど知人だったものの、回を重ねるごとに口コミでさまざまな人が遊びに来てくれる。地元のメディアも取材に訪れるようになり、来訪者の人数はどんどん増えた。
「アクセサリーや焼き菓子、卵、野菜など、ブースの申し込みも軒並み増えていきました。約一年で来訪する人と出店者は、施設のキャパ以上に集まっていましたね」と、神馬さん。
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そんな時、二人に転機が訪れた。横須賀市の「いいね★横須賀エコ活動賞」で、エコルシェ推進賞を受賞したのだ。授賞式では「エコなマルシェの常設店を、横須賀で作りたい!」というスピーチを熱弁。それを聞いていた湘南菱油(株)の大庭社長が、二人に店舗の話を持ちかけてくれた。
「日の出町にあるガソリンスタンドの待合室が空いている、とおっしゃって。以前から、そこを使って何か新しい取り組みができないかと考えていたそうです。あまりにポンポンと物事が運ぶので、そのスピード感に二人して驚いていましたね」と笑う鈴木さん。
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石油エネルギーのガソリンを用いた新車販売は、2035年に禁止になることが決定している。「だからこそ、ガソリンを扱う自分たちは環境活動で何ができるかを考えなければいけない」と、大庭社長はエコルシェに協力してくれた。
店舗はほとんどがDIY。知り合いの大工さんが手伝ってくれたり、商品をいれる什器を提供してくれたり、周囲のサポートで店づくりが進んでいった。ここでも、二人だけでは何もできないことを実感した。全ては地域のサポートがあってこそ。
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晴れてショップがオープンし、近隣の人はもちろん、遠方からも人が訪れるようになった。「ゴミを出さない買い物」体験に、意識の高い若者だけではなく、お年寄りも興味を持ってくれるのは嬉しかった。
ガソリンを入れるために立ち寄り、「横須賀にこんなお店があるのか」と驚く人も多いそう。横須賀を愛する二人だからこそ、横須賀で運営し、街の活力になりたかったと話す。
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「そんな中、キッチンカーをクラウドファンディングで手に入れたんです。エコルシェを運営する中で、環境にも身体にもやさしく、美味しいものに沢山出会ったので。ジューススタンドでフレッシュジュースをいろいろなエリアに届けようと思いました。少しの傷や不揃いの形というだけで出荷できない規格外の野菜や果物を買い取って、ジュースやスープにして販売する地産地消を目指しました」と話す神馬さん。
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提供するカップも妥協したくない。ドリンクを持ち運ぶ耐久性はもちろん、100%生分解性にこだわった。マイボトルを持参すれば30円引きになるサービスも。いたるところにやさしいアイデアが散りばめられている。
マイ容器でしか提供しないのではなく、エコを楽しめる買いやすさを常に考えている二人。柔軟な考えから生まれたエコルシェは、横須賀というエリアで新しいエコを実践している。
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まだまだエコルシェの取り組みは始まったばかり。全国各地に仲間を増やすことを目標に、神馬さんと鈴木さんの活動は続いていく。
エコルシェで購入できる、地球に私に優しいものたち
![〈蜂小屋生はちみつ〉 横須賀産の希少な非加熱のオーガニック蜂蜜。ミツバチがそのまま蜜を集めた状態のため、花の香りも楽しめる。ポリフェノールやフラボノイドなど、抗酸化成分が豊富](https://knot-magazine.jp/wp-content/uploads/2023/10/IMG_7024-1024x683.jpg)
![〈はらくら農園エコ石鹸〉 傷や規格外サイズで市場に出荷できない野菜を用いて作った自然派石鹸。大根やきゅうり、柿の葉、ドクダミなど、さまざまなエコ石鹸を農家で製作](https://knot-magazine.jp/wp-content/uploads/2023/11/DSC07272-1024x683.jpg)
![〈蜜蝋ラップ〉 天然の蜜蝋や植物由来の天然樹脂を用いて作られた、何度も繰り返し使える蜜蝋ラップ。通気性や保湿性に優れているので、食材を包むと鮮度をキープします](https://knot-magazine.jp/wp-content/uploads/2023/12/DSC07328-1024x683.jpg)
![〈ポコポコバナナ〉 これまで廃棄されてきた規格外のバランゴンバナナを、フードロスを目指して「ポコポコバナナ」として販売。甘すぎないナチュラルな甘味に定期的に購入する人が続出](https://knot-magazine.jp/wp-content/uploads/2023/12/DSC07277-1024x683.jpg)
![〈洗剤〉 必要な分だけ購入できて、詰め替えパックのプラゴミを排出しない量り売り洗剤「海をまもる洗剤」。空ボトルを持参して、店頭で入れた量だけ代金を支払う仕組み](https://knot-magazine.jp/wp-content/uploads/2023/12/DSC07426-1024x683.jpg)
![〈STASHER〉 シリコン製の食品保存容器「stasher」は、10年前に鈴木さんが購入して以来、長年愛用している。冷凍・冷蔵保存、電子レンジやオーブン、湯煎など、幅広く活用](https://knot-magazine.jp/wp-content/uploads/2023/12/DSC07469-1024x683.jpg)
![〈乾物〉 乾燥させたリンゴやキウイなどのフルーツから、アーモンドやマカデミアナッツなどナッツ類を量り売りで販売。自分で重さを測って料金を書き出し、レジに持っていく](https://knot-magazine.jp/wp-content/uploads/2023/12/DSC07258-1024x683.jpg)
Staff Credit
Written by Tokiko Nitta
Photographed by Io Takeuchi
Written by Tokiko Nitta
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