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永井由美さん(株式会社LINK代表)

2024-03-01Knot

横須賀・鴨居で親子のためのサードプレイス『mam & kids salon 結-Yui-』を運営する永井由美さん。「結-Yui-」の他に、親子向けサービスや場所づくりのコンサルティング、キャリアカウンセリングなどを行う「株式会社LINK」を経営している。3人の子どもを育てる身で、長年の会社勤めからの起業。そこには母親視点の苦労や悩みを共有できる仲間がいたからこそスタートできた背景があった。
ママの自助努力だけに委ねない子育て社会を目指して
子育て中の親子が安心して過ごせるサロン「mam & kids salon 結-Yui-」を鴨居の海辺にオープンした永井由美さん。その他にも、親子向けのサービスや場所作りのコンサルティングを行う「株式会社LINK」を運営し、各地で働き方改革について講演会を行うなど、三児の母とは思えないフットワークだ。
取材で伺った際も、多忙さを感じさせない朗らかな笑顔で出迎えてくれた。自身が手がけたサロン「結-Yui-」のそばに広がるのどかな浜辺を歩きながらお話を伺った。
「日本ではまだまだ圧倒的に“子育てはお母さんのもの”というイメージがあります。実際、私も3人の子どもを育てる母親ですが、乳幼児期間に母子で気軽に行ける場所がなかったり、あったとしても公民館の片隅にちょっとしたおもちゃが置いてあるスペースだったり、どこか疎外感のあるものでした」
今の日本では、産休・育休は女性のものという認識が未だ拭えない。男性がそこに参入するには、本人の意識はもちろん、企業や周囲の環境にも理解がなくては難しい。
「子育て中の母親の負担がどうしても大きいんですよね。母であるまえに一人の女性なのに。社会的キャリアを諦めるケースが多すぎると思います。私自身そうだったので、そういった女性を支えたいと思っています」と、永井さん。

理想の仕事環境がないなら、新しい選択肢を自分でつくる

起業前は、会社勤めだった永井さん。結婚後は人材開発の会社で自宅の横須賀から神田まで毎日通勤していたという。
「子育てをする母親の身になると、とてもじゃないですが毎日の通勤は難しかった。時短勤務に切り替えても、保育園の預かりやお迎えの時間には間に合いません。職場までの移動時間は大きな壁です。そこで、キャリアカウンセラーの資格を取得し、フリーランスのキャリアカウンセラーとして活動を始めました」
だからこそ、育児のためにキャリアを諦める母の気持ちが痛いほどわかる。クラウドファンディングで資金を集めて横須賀に民間の子育て支援施設をオープンしたのも、その時の体験があるからだ。
例えば、乳幼児と向き合っている時、これが永遠に続くような気持ちになることがある。一日中、幼い我が子と家の中で過ごして、家事と炊事、食事の支度に追われながら、ようやく夜寝かしつけまで辿り着いたとき、「今日は子ども以外、誰とも話さなかったな」と思う母親がどれほどいるだろう。
子どもたちの食事を作るのが精一杯で、自分の食事はキッチンで立ったまま。そんなお母さんだって少なくない。
そういうハードな子育て期間は、子供が一定の年齢を過ぎれば大抵終わるものだが、子育てが最も「孤育て」になりやすい期間でもある。
最も子供に手がかかり、体の負担も大きい乳幼児期間こそ、母親が笑顔で過ごせる場所やサービスがあれば。日本の育児は、もっとポジティブなものになるはずだ。
永井さんはママ友16人と一緒に、ボーネルンドがプロデュースする子育て支援施設を横須賀・鴨居にオープン。サロンには横須賀市内だけでなく、逗子、葉山、鎌倉、横浜、三浦など、遠方からも多くの親子が足を運ぶ。

横須賀のサロンを見て、コンサルティングの相談がたくさん

「サロンの在り方を見た人から、ショッピングモール内に室内遊び場を作って欲しいという依頼もありました。こちらはコンセプト作りからプランニングさせていただき、ショッピングモールでいかに親子が楽しく、そして親もより自由に過ごせるかを考えました。親子で室内で楽しく遊べるのはもちろん、大人だけで映画や買い物に行ける時間が持てるように一時預かりサービスを提供して。現在ここの運営も私の会社で担っています」
今や、小児科に隣接する子育て支援施設をコンサルティングしたり、ホテルと託児サービスを提携したり、学生や女性向けにキャリアカウンセリングをしたりと、永井さんが立ち上げた会社の業務はますます多岐にわたる。
横須賀市内の中学校での講演の様子(写真/本人提供)
子育て支援社向け講座(写真/本人提供)

やりがいや手応えこそ、仕事の原動力。そして生きる力につながる。

コンサルティングを行う醍醐味は「クライアントが喜んでくれたときの姿」という永井さん。ゼロからスタッフと作り上げ、試行錯誤しながらベストな提案ができたとき、本当に達成感が得られると話す。
「最近は、クライアントのスタッフのオペレーション教育に携わる場合も多いんです。私の場合、自分の実店舗運営の経験と、心理学やキャリアカウンセリングの知識を使って、スタッフの育成のアドバイスを行っています。また、仕事の悩みって、実はクライアントの思考のクセやメンタルによるものが多いんですよ。そういった場合は時間がかかりますが、マイナス要素の思考や行動のクセを克服していきます」
クライアントへの寄り添い方が、実に手厚い。とはいえ、まだまだ自分たちではできないことの方が多いと話す永井さん。
「少子化が進む日本で、産後の母子の支援は最重要課題です。でも、そこには行政の力がやっぱり必要。次の世代のお母さんたちが安心して子育てできるように、地方創生はマストだと思います。だからこそ、いろんなパートナーと子育ての環境作りをしていきたいですね」
永井さんと話していると、希望に満ちてくる。“ないなら自分で作ればいい”、そんな選択肢を知ることで、救われる若者も多いはずだ。
日本海に面した秋田県から、横須賀に出てきた永井さん。東北の夏はとても短く、海に行ける期間もほんの少しだった。横須賀に来て初めて明るい海に触れ、今までのどこか寂しい海のイメージがガラッと払拭された。
「横須賀に来てから、海が大好きになったんです。海も山もあって自然が多く、ここで子育てしながら働けるのはありがたいこと。困っている人がいたら、手を差し伸べてくれる人が多いという環境も最高です」
そんなお互いさまの精神が根底にある横須賀。こういった永井さんと同じ視点で社会を捉えられる女性が増えていけば、日本の未来はきっと明るい。 永井さんの行動力と健やかな笑顔を見ているだけで、そんな気持ちになってくる。
Staff Credit
Written by Tokiko Nitta
Photographed by Io Takeuchi
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