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子育てを“孤育て”にしない。母たちの想いから生まれた「mam & kids salon 結-Yui-」

2024-03-27Knot

鴨居の海のそばに、子どもたちの笑い声が絶え間なく聞こえる施設がある。隣にはイチョウの御神木が佇む八幡神社、目の前には海と砂浜が広がり、お年寄りが座って井戸端会議をしている。そんなのどかな景色の中に、子どもたちがのびのびと遊べて、大人もリフレッシュできる子育て支援サロン「結-Yui-」が誕生したのは2018年のこと。

自宅でもない公共施設でもない“サードプレイス”

靴を脱いでサロン内にお邪魔すると、手前のカフェスペースでくつろぐお母さんたちの姿。その奥のプレイルームでは、ボーネルンドの知育玩具に夢中になる子どもたちがいる。
ここは、三児の母である永井由美さんがママ友達と一緒に立ち上げた子育てサロンだ。一階にはカフェと子どものプレイルーム、二階にはさまざまなイベントが開催できるレンタルスペースが広がる。 
木材を多用した温かみのある北欧テイストの空間は、決して“子どものための託児所”ではない。白壁とペールトーンで統一された明るいフロアに、ソファでくつろげるスペースと、PCが使えるカウンター席をあしらい、大人こそ息抜きできる洗練されたカフェ仕様になっていた。 

子どもが楽しいだけじゃない、大人がくつろげる視点 

「空間のインテリアは、実は一番こだわった部分です。子どもが楽しめるのはもちろんですが、子育てで疲れているお母さんがちゃんとリフレッシュできるように、きちんとカフェ要素を持たせました」と、代表の永井由美さんは話す。
永井さんの言葉どおり、ここでお茶を飲んでいると、都心のどこかのカフェでくつろいでいる感覚になる。実際には、人気(ひとけ)の少ない立地なのだが、室内のインテリアや賑やかさから決してそうは思えない。永井さん曰く「それが子育て中のお母さんには欲しい要素なのだ」という。 
永井さんの他に在籍するスタッフは、全員が子育て真っ只中の現役ママたち。保育士だった人もいれば、飲食業界で働いてきた人もいる。みんながそれぞれのキャリアを活かしつつ、無理のない範囲でサロンを運営しているのだ。

お母さんの“欲しい”を集めた施設を目指して

オープンまでの経緯を伺うと、永井さん自身も「みなとみらい」にあったボーネルンドの遊び場を利用して大変助かった、というエピソードから話してくれた。
「その日は、ちょうど下の子を連れてボーネルンドで遊んでいました。トイレにオムツを代えに入ったら、“遊び場をプロデュースします”というドアの張り紙が目に飛び込んできて。その瞬間に、え?!私もやりたい!と思ったんです」
もともと、横須賀には子どもを気軽に連れて行ける場所が少ないという。お母さんが子どもと一緒に息抜きしたくても、なかなか叶わないのが現状だ。それは、子育て中に永井さんが何度も痛感したことだった。 
「この張り紙を見て、初めて“場所が無いなら自分が作ればいいんだ!”という発想に切り替わりました。そこで、ボーネルンドにすぐ問合せをして、営業担当の方に話し合いの場を設けてもらったんです」
 ボーネルンドの担当者は、すぐに永井さんの自宅を訪問してくれた。そこで、子育て期間に胸の内にとどまっていた想いを伝えたという永井さん。
「子どもと楽しく遊びたくても、実際のお母さんは育児と家事でヘトヘトです。産休や育休中にお母さんが安心してリフレッシュできる場所があってこそ、子どもと接するときに笑顔になれるんです。何よりもそこが大切! お母さんと子どものための居場所が、いかにこの社会に必要かを熱く語りました」 
その熱い想いをボーネルンドの担当者もよくわかってくれたそう。
ありがたいことに、サロンの運営に必要な仲間はあっという間に集まったそう。協力してくれる人を探していくと「一緒にやりたい!」という同志がたくさんいたのだ。
「子育て期間に感じることは、みんな一緒だったんですよね」と、永井さんは嬉しそうに話す。

13日間で到達したクラウドファンディングの目標額

資金はクラウドファンディングをサポートする会社「READYFOR」に依頼。2ヶ月で100万円を目標にした。
当初は「果たして集まるのだろうか」と不安だったものの、蓋を開けてみると、何と13日間でその目標額をクリアしたのだ。
「お会いしたことがない方もたくさん寄付してくださったんです。応援してくれる方がこんなにいるんだと本当に嬉しかった」と、思い出しては永井さんの瞳が潤む。
肝心の建物は、義父が数年前に購入した物件を利用させてもらった。「親子の遊び場を作りたい」と相談したら、快く貸してくれたそう。
みんなのさまざまな協力のもと、永井さんが夢に描いた母子のサードプレイスが形になっていく。

子育てが“孤育て”にならないように

「結-Yui-」のサロン内容を伺うと、プレイルームではスタッフが“見守り型保育”で子どもの遊びをサポートするシステム。お母さんたちはその様子を見ながらゆっくりお茶したり、PCで仕事もできる。
何より頼もしいのは、前述の通り、スタッフが全員子育て中の身だということ。日頃のちょっとした悩みや相談も気軽にできるのが嬉しいと、利用者の多くがこぼす。
しかも、大型の遊具や築山、壁面遊具が備わり、室内でも頭と体をフル稼働できるのだ。雨の日でもここにくればのびのび遊べる。それだけで救われるお母さんがどれほどいるだろう。
さらに嬉しいのは、保育士スタッフが子どもをみてくれる「一時預かりサービス」が完備していること。これで、美容院や病院、他の兄弟の学校行事に行きたい時も安心して預けられる。 
ちなみに一階のカフェスペースでは、本格的な食事も楽しめるのもありがたい。サロンで食事を済ませて帰るお母さんも多いそう。
思いっきり母子で遊んだあと、食事の買い出しや支度をするのがどれだけ大変か。
ハンバーグ(デミグラスソース)/チキン/唐揚げから選べる”プレートランチ”
「やはり、運営が主婦たちだと痒いところに手がとどく」。これは、利用している多くのお母さんらが口を揃えて言ってくれたことだった。
「子育てを“孤育て”にしないように、自宅でも公共施設でもない親子の場所をつくろうとして出来たサロンです。今、街中には空き家がたくさん増えていますよね。そういう場所は、次々と駐車場や高齢者向けの施設になっています。もちろん、それも必要なのですが。同じくらい子育て向けの場所が必要です。
あっという間に過ぎてしまう乳幼児期の子育てを、辛い思い出だけで終わって欲しくない。いろんな人が交流し、意見交換も出来たら、きっと楽しく過ごせるし、自分らしい子育てにつながっていくと思います」
そう話す永井さんには、まだまだやりたいことがたくさんあります。横須賀だけでなく、全国のさまざまな場所にこういったサードプレイスを手掛けたい。お母さんたちが親子の楽しい思い出を増やすきっかけを作りたいと話します。
結-Yui-の優しい嬉しいサービスたち
Staff Credit
Written by Tokiko Nitta
Photographed by Io Takeuchi
Information
住所:神奈川県横須賀市鴨居3-5-3
※京急浦賀駅よりバスにて「観音崎行き」に乗り
「鴨居」下車徒歩1分
駐車場有

営業日:平日 10:00〜15:00
    土曜日 不定期定業 11:00~15:00
休み:日・祝日、GW、お盆、年末年始 
★詳しくはInstagramをご覧ください。
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